第3回 2行2列の行列の逆行列
A、Xを2行2列の行列(2次の正方行列)、Eを単位行列とする。
Aに対して
を満たすXをAの逆行列といい、記号A⁻¹で表す。また、逆行列を持つ行列を正則行列という。
また、
だから、A⁻¹の逆行列はAである。
したがって、
である。
【逆行列の一意性の証明】
XとYが行列Aの逆行列とする。
逆行列の定義より、
よって、
したがって、Aの逆行列はただ1つである。
(証明終)
において、ad−bc≠0のとき、Aの逆行列は
である。
また、ad−bcの値をAの行列式といい、記号、などであらわす。
したがって、
問1 、ad−bc≠0のとき、
がAの逆行列であることを確かめよ。
【解】
とする。
よって、XはAの逆行列である。
(解答終)
問2 次の行列に逆行列があれば、それを求めよ。
【解】
(1) |A|=1・4−2・3=−2≠0。よって、Aには逆行列があり、
(2) |B|=1・4−2・2=0だから、Bの逆行列は存在しない。
(3)
よって、Cには逆行列が存在し、
(解答終)
(補足)
問3の(3)のCの逆行列は
になっていることに注意。
行列Cを表す写像fとすると、fは平面上の点を原点を中心に時計回りにθ回転させる写像。したがって、その逆写像は原点を中心に−θ回転させる写像である。
したがって、を表す行列は
(補足終)
は、|A|=ad−bc=0のときに逆行列をもたない。
ad−bc=0という条件は
と
と同じ条件。
したがって、行列Aの列ベクトルと、行ベクトルとが平行なときに、Aは逆行列をもたない。
問2の(2)はこの条件を満たしているので、逆行列をもたない。
問3 のとき、AC=Bとなる行列Cがあれば求めよ。
【解】
|A|=1・1−2・(−2)=5≠0だから、Aに逆行列は存在し、
また、AC=Bだから、
(解答終)
行列の積は交換法則が成り立たないから、
ではなく、問3の中で示した
であることに注意!!
問4 A、Bを2次の正方行列とする。A、Bがともに逆行列をもつとき、A+Bは逆行列を持つか。
また、A+Bが逆行列をもつとき、AとBは逆行列を持つか。
【解】
とすると、|A+B|=1・2−2・1=0だから逆行列をもたない。
A+Bを
と分解すると、|A|=2≠0、|B|=−2≠0だから、AとBは逆行列をもたない。
したがって、命題「A、Bを2次の正方行列とする。A、Bがともに逆行列をもつとき、A+Bは逆行列を持つ」は偽。
また、
E²=EE=Eだから、A+Bの逆行列はE。(あるいは、|A+B|=1≠0だから、A+Bは逆行列を持つ。)
とすると、|A|=|B|=0であり、AとBはともに逆行列をもたない。
よって、命題「A+Bが逆行列をもつとき、AとBは逆行列を持つ」は偽である。
(解答終)
問5 A、Bを2次の正方行列とする。
AとBが正則行列のとき、ABは正則行列であり、その逆行列(AB)⁻¹は
であることを示せ。
【略証】
したがって、A⁻¹B⁻¹はABの逆行列。
よって、
(略証終)
証明はしないが、
A、Bが2次の正方行列であるとき、行列式に関して、次の関係が成立する。
この関係を使うと、
A²=Eのとき、
だから、Aは逆行列をもつことを示すことができる。
問6 AとBを2次の正方行列とするとする。
次の命題は正しいか。
であるとき、AまたはBは零行列である。
【解】
とすると、
よって、この命題は正しくない。
(解答終)
問6の解答の正方行列A、Bのように、
A≠OかつB≠Oのとき、
が成立するものがある。
このようなA、Bを零因子という。
ただし、A、Bがのいずれかが逆行列をもつとき、
は成立する。
何故ならば、
いま仮、A、BのAが逆行列を持つとすると、
となるからだ。
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