2018年2月24日土曜日

第3回 2行2列の行列の逆行列

第3回 2行2列の行列の逆行列


AXを2行2列の行列(2次の正方行列)、Eを単位行列とする。
Aに対して
  
を満たすXA逆行列といい、記号A⁻¹で表す。また、逆行列を持つ行列を正則行列という。
また、
  
だから、A⁻¹の逆行列はAである。
したがって、
  
である。

【逆行列の一意性の証明】
XYが行列Aの逆行列とする。
逆行列の定義より、
  
よって、
  
したがって、Aの逆行列はただ1つである。
(証明終)

において、ad−bc≠0のとき、Aの逆行列は
  
である。
また、ad−bcの値をA行列式といい、記号、などであらわす。
したがって、
  

問1 ad−bc≠0のとき、
   
Aの逆行列であることを確かめよ。
【解】
  
とする。
  
よって、XAの逆行列である。
(解答終)

問2 次の行列に逆行列があれば、それを求めよ。
【解】
(1) |A=14−23=−2≠0。よって、Aには逆行列があり、
  

(2) |B=14−22=0だから、Bの逆行列は存在しない。

(3)
  


よって、Cには逆行列が存在し、
  
(解答終)

(補足)
問3の(3)のCの逆行列は
  
になっていることに注意。
行列Cを表す写像fとすると、fは平面上の点を原点を中心に時計回りにθ回転させる写像。したがって、その逆写像は原点を中心に−θ回転させる写像である。
したがって、を表す行列
  
(補足終)

は、|A=ad−bc=0のときに逆行列をもたない。
ad−bc=0という条件は
  
  
と同じ条件。
したがって、行列Aの列ベクトル、行ベクトルが平行なときに、Aは逆行列をもたない。
問2の(2)はこの条件を満たしているので、逆行列をもたない。


問3 のとき、ACBとなる行列Cがあれば求めよ。
【解】
A=11−2(−2)=5≠0だから、Aに逆行列は存在し、
  
また、AC=Bだから、
  
(解答終)

行列の積は交換法則が成り立たないから、
  
ではなく、問3の中で示した
  
であることに注意!!


問4 ABを2次の正方行列とする。ABがともに逆行列をもつとき、A+Bは逆行列を持つか。
また、A+Bが逆行列をもつとき、ABは逆行列を持つか。
【解】
  
とすると、|A+B=12−21=0だから逆行列をもたない。
A+B
  
と分解すると、|A=2≠0、|B=−2≠0だから、ABは逆行列をもたない。
したがって、命題「ABを2次の正方行列とする。ABがともに逆行列をもつとき、A+Bは逆行列を持つ」は偽。
また、
  
E²=EE=Eだから、A+Bの逆行列はE。(あるいは、|A+B=1≠0だから、A+Bは逆行列を持つ。)
  
とすると、|A=B=0であり、ABはともに逆行列をもたない。
よって、命題「A+Bが逆行列をもつとき、ABは逆行列を持つ」は偽である。
(解答終)

問5 ABを2次の正方行列とする。
ABが正則行列のとき、ABは正則行列であり、その逆行列(AB)⁻¹
  
であることを示せ。
【略証】
  
したがって、A⁻¹B⁻¹ABの逆行列。
よって、
  
(略証終)

証明はしないが、
ABが2次の正方行列であるとき、行列式に関して、次の関係が成立する。
  

この関係を使うと、
A²=Eのとき、
  
だから、Aは逆行列をもつことを示すことができる。


問6 ABを2次の正方行列とするとする。
次の命題は正しいか。
  
であるとき、AまたはBは零行列である。
【解】
  
とすると、
  
よって、この命題は正しくない。
(解答終)

問6の解答の正方行列ABのように、
A≠OかつB≠Oのとき、
  
が成立するものがある。
このようなAB零因子という。
ただし、ABがのいずれかが逆行列をもつとき、
  
は成立する。
何故ならば、
いま仮、ABAが逆行列を持つとすると、
  
となるからだ。

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