2019年10月2日水曜日

第34回 定積分の定義とその性質

第34回 定積分の定義とその性質


§1 定積分の定義

f(x)は有界な閉区間[a,b]で定義されている有界な関数である。
分割
に対し、次の和(リーマン和)を考える。
任意の分割Δに関して、であるの選び方によらず、
となる実数Sが存在するとき、f(x)[a,b]で(リーマン)積分可能であるといい、
で表す。
すなわち、
ここで、の最大値で、分割の幅である。

また、
a<bのとき、
と定義する。
さらに、a=bのとき、すなわち、
と定義する。


例1 cを定数とするとき、
は、[a,b]で積分可能で、
何故ならば、
である全ての分割に関して、であるの選び方に関わらず、

例2 [a,b]で積分可能で、
である。
任意の分割Δに関して、
に取ると、
また、任意のに対して、
したがって、

例3 a<c<bとし、
とすると、f(x)[a,b]で積分可能で、
分割
で、点cを含む区間の数が最も多くなるのは、となる自然数kが存在するときで、このとき、
任意のに対して、

例4
は、[a,b]で(リーマン)積分可能でない。
何故ならば、に無理数の点をとれば、
有理数の点をとれば、
となるので。

§2 定積分の基本的な性質

定理1 有界閉区間I=[a,b]上でf(x)g(x)は積分可能で、λμを定数とするとき、I上で積分可能で
【証明】
分割Δを任意にとると、
したがって、I上で積分可能で、
(証明終)

定理2 関数f(x)g(x)I=[a,b]上で積分可能とする。
ならば、
特に、
【証明】
Iの分割Δを任意にとると、仮定より
したがって、
Δ|→0とすると、
(証明終)

(注) 例2から、
は、一般に成り立たないことがわかる。

次の2つの定理の証明は、すこし、厄介なので、定理だけをあげる。

定理3 f(x)[a,b]で積分可能ならば、

定理4 f(x)[a,b]で単調または連続であれば、f(x)[a,b]で積分可能である。

定理5 f(x)g(x)[a,b]で連続ならば、
は、[a,b]で積分可能である。
【略証】
f(x)g(x)[a,b]で連続ならば、[a,b]で連続。したがって、定理4より、積分可能である。
(略証終)


問1 f(x)g(x)[a,b]で連続な関数とする。
このとき、
[a,b]で積分可能であることを示せ。
【解】
f(x)g(x)[a,b]で連続だから、[a,b]で連続。
したがって、[a,b]で積分可能である。
(解答終)

定理6
f(x)[a,b]で連続とする。任意のx∈[a,b]についてf(x)≧0、かつ、ならば、f(x)≡0である。
【証明】
f(c)>0であるca<c<bに存在すると、f(x)は連続なので、十分ちいさなδ>0を選ぶと、
とすることができる。
となり矛盾。
よって、f(x)≡0
(証明終)

問2 f(x)g(x)[a,b]で連続である。[a,b]f(x)≧g(x)かつならば、f=gであることを示せ。
【解」
h(x)=f(x)−g(x)とおくと、h(x)[a,b]で連続なので、h(x)[a,b]で積分可能。
また、[a,b]h(x)≧0で、かつ、
したがって、定理6よりh(x)[a,b]で恒等的にh(x)=0
ゆえに、f=g
(解答終)


定理7(積分の三角不等式)
f(x)[a,b]で連続ならば、
【証明】
f(x)[a,b]で連続なので、f(x)と|f(x)|は[a,b]で積分可能。
分割Δを任意に取ると、
したがって、
(証明終)

【別証」
だから
(別証終)


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