2017年3月5日日曜日

関数の連続の問題

関数の連続の問題



問題1
とするとき、関数の連続性を調べよ。
【解】
a∈Rとし、fが点aで連続であると仮定する。
aに収束する有理数の点列(数列)を考えると、
aに収束する無理数の点列を考えると
関数fは点aで連続なのだからaに収束するすべての点列に対して
にならなければならないので、
つまり、この関数が連続になりうる点はa=1/2のみである。

そこで、点1/2の近傍、つまり、|x−1/2δ>0)を考えると、xが有理数のとき
xが無理数のとき
いずれにせよ
したがって、δ→0のとき
となり連続になる。

fが点1/2で連続であることをε-δ論法で証明したいならば、
任意の正数ε>0に対してδ=εとすると
となるから、関数fx=1/2で連続である。

したがって、x=1/2で連続、それ以外では不連続。
(解答終)


問題2 RからRへの関数がいたるところで連続で、xが有理数のときつねにf(x)=0ならば、fは恒等的に0であることを証明せよ。
【証明】
fは恒等的に0でない、つまり、f(a)≠0である無理数aが存在すると仮定する。
f(a)≠0だから、f(a)>0またはf(a)<0
f(a)>0の場合、関数fx=aで連続だから任意の正数ε>0に対して
となる正数δ>0が存在する。
εは任意の正数だからε=f(a)/2とおくと
つまり、f(a)>0のとき、aの近傍ではf(x)>0である。
同様に、f(a)<0のとき、aの近傍ではf(x)<0である。
無理数aの近傍には有理数xが存在し、f(x)>0またはf(x)<0、つまり、f(x)≠0にならなければならないけれど、これはxが有理数であるとき常にf(x)=0であるということに矛盾する。
この矛盾はxが無理数のとき恒等的にf(x)=0でないと仮定したためである。
よって、xが無理数のときも恒等的にf(x)=0となり、証明された。
(証明終)

ちなみに、f(a)<0のときは、とし
の不等式の右辺を使って
とするとよい。

【別の証明(?)】
無理数xに収束する有理数の点列をとると、関数fは点xで連続だから
したがって、xが無理数のときもfは恒等的に0である。
よって、証明された。
(証明(?)終)


問題3 閉区間[a,b]で連続な関数f(x)のとる値がつねに有理数だけならば、f(x)[a,b]で定数関数であることを証明せよ。
【証明】
f(x)[a,b]で定数関数でないとする。
つまり、c∈[a,b]f(c)≠f(a)とする。
f(c)>f(a)とすると、問題の条件より、a≦x≦cで関数f(x)は連続だから、中間値の定理より
のすべてのβに対してβ=f(γ)となるγa<γ<cに存在する。
f(a)<β<f(c)を満たす無理数βを1つ取り出すと、β=f(γ)を満たすγa<γ<cに存在することになり、f(x)が常に有理数の値をとることと矛盾する。
この矛盾はf(x)[a,b]で定数関数でないと仮定したことに起因する。
よって、f(x)[a,b]で常に有理数の値だけをとるならば、f(x)[a,b]で定数関数である。
(証明終)

今回の問題は、ほんの序の口だにゃ。
次回は脳味噌が痺れる問題を紹介するにゃ。
そして、次回の記事を読んだヒトのほとんどが関数の連続が何かわからなくなってしまう。


2017年3月1日水曜日

関数の連続の定義

関数の連続の定義



関数の連続の定義は、
定義Ⅰ
関数f(x)の定義域Iに属する任意のaに対して
であるとき、関数f(x)x=aで連続であるという。

定義Ⅰは、高校で習い、それ以降も使い続けている連続の定義だからおなじみだと思う。

ε-δ論法ならば、次のようになる。

定義Ⅱ
fを区間Iで定義された関数、a∈Iとする。
任意の正数ε>0に対して、
となる正数δ>0が存在するとき、関数fx=aで連続であるという。

定義Ⅱは、難解(?)で有名な、悪名高いε-δ論法を用いた関数の連続の定義で、高校時代に数学が得意中の得意であった学生の圧倒的大多数がここでドロップアウトしてしまう。そして、多数の(大学の)数学嫌いを排出してしまう(^^)
このためだろうか、解析学の名著とされる高木貞治の『解析概論』は、基本的に、この悪名高いε-δ論法を採用しておらず、(1)と(2)の中間的な手法が使われているようだ。

この2つの定義の他に、収束する数列(点列)を用いた関数の連続の定義が存在する。

定義Ⅲ
fを区間Iで定義された関数、a∈Iとする。
aに収束するすべての点列に対して
であるとき、関数fx=aで連続であるという。

(大学の)微分積分、解析などの教科書のなかには、(2)の定義はあまりに難解(?)ということで、定義Ⅲを関数の連続として採用しているものもある。
定義Ⅱと定義Ⅲは同値の命題なので、どちらを関数の連続の定義として採用しても構わない。

【証明】
定義Ⅱ⇒定義Ⅲ
(2)から定まるδ>0をとると、関数fx=aで連続なので、任意の正数ε>0に対して
点列aに収束するので、任意の正数ε’>0に対して
となる正の整数Nが存在する。
ε'は任意の正数だからε'=δとおくと
となるNが存在し、①と②より

定義Ⅲ⇒定義Ⅱ
(2)を否定すると
あるε>0があって、任意のδ>0に対して、
となるxが存在することになる。
このとき、δ=1/nとすると
となるが存在する。
このようにして得られたを一つ選び、新たにというを作ると、この数列は
になるけれど、
である。
よって、証明された。
(証明終)

定義Ⅲ⇒定義Ⅱの証明では、対偶法を使っているのでわかりにくいと思うけれど・・・。

ちなみに、対偶法は、「p⇒q」という命題と「¬q⇒¬p」という命題が同値であることを利用して、「p⇒q」という命題を証明する代わりに「¬q⇒¬p」という命題を証明する証明法のことである。

ε-δ論法の代わりに、定義Ⅲでは数列の極限でε-δ論法の仲間であるε-N論法を使っているので、定義Ⅱ、定義Ⅲの分かりにくさは五十歩百歩で変わらないと思うのだが・・・。

問題
関数fRで連続とする。∀x,∀y∈Rに対して
であるとき、ff(x)=f(1)xで表されることを証明せよ。
【証明】
したがって、任意のxについて
また、
同様に
したがって、n≠0の整数nに対して
よって、すべてのmn以外のすべての整数に対して
x=m/nとおけば

ここで終わりにしてはいけない。
なぜならば、x=m/nの形で表される点、つまり、有理数の点でのみ、f(x)=f(1)xになることを示しただけで、無理数の点でもf(x)=f(1)xが成立することを証明していない。
それに、問題中にある実数Rの全域でfが連続という条件をまだ使っていない!!

ここで、今回、紹介した定義Ⅲが威力を発揮する!!

無理数xに収束する有理数の数列となるものを選ぶと、fが連続であることより
よって、無理数の点xに対しても
である。
よって、証明された。
(証明終)

そして、ネムネコは、
定義Ⅲを用いたこの証明は、奥歯に物が挟まっているようで、大嫌いだ!!