2018年4月2日月曜日

アルキメデスの公理と単調数列の収束定理

アルキメデスの公理と単調数列の収束定理


上限の存在を用いて、次のアルキメデスの公理を証明することにする。

アルキメデスの公理
任意の正数ab∈Rに対して、適当なn∈Rをとると、
とすることができる。
【証明】
すべてのn∈Nに対して
と仮定すると、すべてのnに対して、
となり、自然数全体の集合Nは上に有界となる。
そこで、
とすると、α−1<αだから、
となるn∈Nが存在する。
よって、
となり、自然数Nに上限αがあることに反する。
したがって、
である。
(証明終)

また、
アルキメデスの公理は、hが正のならば、任意のK>0に対して
となるn∈Nが存在する、
すなわち、
の形であらわすことができる。

問1 aを非負の実数とする。任意の自然数nに対して、
が成立するならば、a=0であることを示せ。
【解】
a≠0とすると、a>0
すると、任意の自然数nに対して
となり、自然数全体の集合Nは有界となる。(以下、アルキメデスの公理の証明と同様なので、省略)。
したがって、a=0である。
(解答終)

問1の証明で、
よって、ハサミ打ちの定理より、a=0、など答えてはいけない。
いま、やっていることは、数列の極限や数列の極限に関する一連の諸定理の前提となる基礎理論だから、ハサミ打ちの定理を使うと、循環論法になってしまう。


問2 ab∈R、かつ、a<bならば、a<r<bとなるr∈Qが存在することを示せ。ここで、Qは有理数全体の集合である。
【解】
a<0<bならば、r=0をとればよい。したがって、0≦a<ba<b≦0の場合を考えればよい。
0≦a<bの場合
b−a>0だから、アルキメデスの公理より
となるn∈Nが存在する。
また、このnに対して
を満たすm∈Nが存在する。
このmのうちの最小のものをとると、
したがって、
このm/nrに取ればよい。
(解答終)

数列の極限
数列に対し次の条件を満たすα∈Rが存在するとき、α収束するという。
任意の正数ε>0に対し、m∈Nが存在し、
このときα極限値といい、
などであらわす。
収束しない数列を発散数列という。特に、次の条件を満たすとき、数列は∞に発散するといい、であらわす。
任意のK>0に対して、m∈Nが存在し、
である。

収束する数列については次のことが成り立つ。

定理1 数列の極限はただ1つである。

定理2 とすると、

定理3 (単調数列の収束)
(1) 上に有界な増加数列は収束する。
(2) 下に有界な現象数列は収束する。
【証明】
(1) は上に有界な増加数列なので、
とすると、集合Aは上に有界。
したがって、
が存在し、上限の定義より
である。
は増加数列だから、任意のε>0に対して
となる
ゆえに、n>mである全てのnに対して
したがって、上に有界な増加数列は収束する。

(2) とすると、数列は上に単調な増加数列となり、収束する。
したがって、下に有界な減少数列も収束する。
(証明終)


問3 上の定理を用いて、アルキメデスの公理を証明せよ。
【証明】
h>0とすると、数列は増加数列。
そこで、
とおく。
Aが上に有界とすると、集合Aには上限αが存在し、
となるが、
となり、h>0に反する。
よって、集合Aは上に有界ではないことになり、アルキメデスの公理は成り立つ。
(証明終)

そして、有界な単調数列の収束の定理とアルキメデスの公理を用いて、次の区間縮小法の原理を証明でき、さらに、区間縮小法の原理とアルキメデスの公理を用いて、デデキントの実数連続性の公理を証明することができる。

定理4 (区間縮小法の原理)
かつならば

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