2017年3月10日金曜日

上限と下限

上限と下限


§1 上界と下界
Aを実数Rの空でない部分集合とする。
α∈Rが、任意のx∈Aに対し、α≧xであるとき、αA上界という。
β∈Rが、任意のx∈Aに対し、β≦xであるとき、βA下界という。
Aの上界(下界)が存在するとき、A上に有界下に有界)であるという。Aが上に有界かつ下に下界であるとき、A有界であるという。


例1 空でない実数Rの部分集合
があるとする。
α≧1の実数αに対して、任意のx∈Aα≧xだから、αAの上界で、1Aの最小の上界である。
β≦0の実数βに対して、任意のx∈Aβ≦xだから、βAの下界で、0Aの最大の下界である。
また、Aは上に有界でかつ下に有界だから、Aは有界である。

§2 上限と下限
空でない実数Rの部分集合Aが上に有界(下に有界)ならば、Aの上界(下界)の全体集合Bには最小数(最大数)が存在する。
Aの上界の最小数をAの上限といい、sup Aあるいはであらわす。
Aの下界の最大数をAの下界といい、inf Aあるいはであらわす。
Aが上に有界(下に有界)でないとき、sup A=+∞inf A=−∞とあらわす。


定理1
sup A=αである必要十分な条件は、任意のx∈Aに対してx≦α、かつ、任意の正数ε>0に対してα−ε<xを満たすx∈Aが存在することである。
すなわち、
inf A=βである必要十分な条件は、任意のx∈Aに対してβ≦x、かつ、任意の正数ε>0に対してx<β+εを満たすx∈Aが存在することである。
すなわち、

定理2
A⊂Bならば、inf B ≦ inf A ≦ sup A ≦ sup B
【証明】
sup A=αsup B=βα>βとする。
とおくと、αAの上限だから
となるx∈Aが存在する。
x∈Aならばx∈Bだからx≦βとなり、矛盾する。
よって、α≦βで、sup A ≦ sup Bである。
inf A=αinf B=ββ>αとする。
とおくと、αAの下限だから
となるx∈Aに存在する。
x∈Aならばx∈Bだからx≧βとなり、矛盾する。
よって、β≦αで、inf B ≦ inf Aである。
(証明終了)


例2
とすると、A⊂B
このとき、inf A = 0sup A = 1inf B = −1sup B = 2だから、inf B < inf A < sup A < sup Bとなり、inf B ≦ inf A ≦ sup A ≦ sup Bが成立している。
A⊂Cで、inf C=0sup C=1だから、inf C = inf A < sup A = sup Cとなり、inf C ≦ inf A ≦ sup A ≦ sup Bが成立している。


問 開区間I=(a,b)とするとき、inf I = asup I=bであることを示せ。
【解】
開区間I=(a,b)
だから、任意のx∈Iならば、a<xかつx<b
したがって、aは集合Iの下界、bは集合Iの上界である。
inf I=α<aとする。
とすると、定理1より
となり、αIの下限であることに反する。
したがって、inf I=aである。
sup I= β>bとする。
とすると、
となり、βIの上限であることに反する。
したがって、sup I=bである。
(解答終了)

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