第8回 単射、全射、逆写像
§1 単射と全射
を写像とする。
任意のに対して
であるとき、fは単射であるという。
単射の定義には、(1)の対偶をとった次のものを使ってもよい。
任意のに対して
問 次のことを示せ。
(1) f(x)=x³で定義される写像f:R→Rは単射である。
(2) f(x)=x²で定義されるf:R→Rは単射でない。
【解】
(1) f(x₁)=f(x₂)とすると、
これが成立するのは、
よって、
ゆえに、この写像は単射である。
(2) f(1)=f(−1)=1だから、この写像は単射でない。
(解答終)
を写像とする。
任意のy∈Yに対して、f(x)=yを満たすx∈Xが存在するとき、すなわち、
であるとき、fは全射という。
また、fが全射かつ単射であるとき、fは全単射であるという。
問2 次のことを示せ。
(1) f(x)=2x+3で与えられる写像f:R→Rは全射である。
(2) f(x)=x²で与えられる写像f:R→Rは全射でない。
【解】
(1) 任意のy∈Rに対して
よって、この写像は全射である。
(2) y=−1とすると、
を満たす実数xは存在しない。
したがって、この写像は全射ではない。
(解答終)
(1)のf(x)=2x+3で与えられるf:R→Rは単射でもあるので、全単射である。
問3 f(x)=x²で与えられる写像f:X→Yがあるとする。
(1) Xを実数全体の集合Rとし、Y={y∈R|y≧0}とすると、fは全射になることを示せ。
(2) X={x∈R|x≧0}、Y={y∈R|y≧0}とすると、fは全単射になることを示せ。
【解】
(1) 任意のy≧0に対して、とおくと、x∈Xであり、
となるので、fは全射である。
(2)は略
(解答終)
定理1 写像について次のことが成り立つ。
(1) を満たす写像が存在すれば、fは全射である。
(2) を満たす写像が存在すれば、fは単射である。
(3) かつを満たす写像g、hが存在するならばfは全単射である。また、g=hである。
【証明】
(1) 任意のy∈Yに対して、とすれば、
よって、fは全射である。
(2) だから
とすると、
よって、
ゆえに、fは単射である。
(3) (1)、(2)よりfが全単射。
fは全単射だからy=f(x)を満たすx∈Xがただ一つ存在する。
一方、任意のyに対して
が成り立つので、
(証明終)
定理2 X、Y、Zを集合、を写像とする。このとき、次のことが成り立つ。
(1) が単射ならば、fは単射である。
(2) が全射ならば、gは全射である。
【証明】
(1) f(x₁)=f(x₂)とすると、
は単射なので、x₁=x₂である。
したがって、
よって、fは単射である。
(2) は全射なので、任意のz∈Zに対して、あるx∈Xがあって、
そこで、y=f(x)∈Yとおくと、
よって、gは全射である。
(証明終)
問3 写像であるf、gともに全単射ならば、XからZへの合成写像は全単射であることを示せ。
【解】
仮定より、任意のz∈Zに対してz=g(y)であるy∈Yが存在し、また、y=f(x)であるx∈Xも存在し、
よって、は全射である。
また、とすると、fは単射なので、
また、gも単射なので、
よって、は単射である。
したがって、は全単射である。
(解答終)
この逆、
が全単射ならば、f、gは全単射である
は、一般に、成立しないので、注意。
§2 逆写像
写像が全単射ならば、任意のy∈Yに対して、あるx∈Xが存在してy=f(x)である。一方、このようなx∈Xは各yに対してただ一つである。したがって、任意のy∈Yに対して、y=f(x)を満たすx∈Xがただ1つ定まり、写像を定義することができる。この写像gも全単射であり、を満たす。このような写像をfの逆写像といい、f⁻¹で表す。
問4 写像が全単射のならば、次のことが成り立つことを示せ。
【解】
(1) 任意のx∈Xに対して
(2) 任意のy∈Yに対して
定理3 とする。このとき、次のことが成り立つ。
【証明】
(1) 任意のx∈Xに対して
とおけば、
よって、
(2)
、さらに、とすると、
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