第30回 非回転ベクトル
ストークスの定理
閉曲線Cで囲まれた領域Sでである。
前回やったストークスの定理が今回の話の基本になります。
では、今回の話。
領域Dにおいて連続なベクトル場Aがスカラー場φによって
A=grad
φ=∇φ
であらわされるとき、Aはポテンシャルをもつといい、φをスカラーポテンシャルまたはポテンシャルという。
単連結
空間領域D内の任意の閉曲線を、D内で連続的に変形して1点に縮められるとき、Dを単連結という。たとえば、全空間、球面の内部、全空間から有限個の点を除いた領域などは単連結である。これに対して、全空間から1直線を取り除いた領域は単連結でない。
非回転なベクトル場
ある領域で恒等的にrot
A=∇×A=0となるベクトル場Aを非回転的(渦なし)であるという。
ポテンシャルφをもつベクトル場Aは∇×A=∇×(∇φ)=0になるので、非回転なベクトル場だケロ。
単連結領域DでAは非回転なベクトル場とする。さらに、D内の任意の閉曲線をCをすると、閉曲線Cで囲まれた領域Sに対してストークスの定理が成り立ち
となる。
このことは、領域D内に任意の2点P、Qをとると、PからQへの曲線に沿っての線積分の値は曲線のとり方によらず一定で、始点Pと終点Qによって定まることを意味する。
となり、PとQを結ぶ曲線の経路によらないことがわかる。
つまり、非回転的なベクトル場では、線積分の値は積分経路によらず始点Pと終点Qで定まる。だから、道筋を示すことなく、
と書くことができる。
点Pを固定し、点P、Qの位置ベクトルをr₀、rとし
は、Dで定義されたスカラー場となる。
このφはベクトル場Aのポテンシャルなのだけれど、このことを次に証明するにゃ。
次の図のようにP₀を固定し、Pのごく近くの点をQとする。
そうすると、
そうすると、
線分PP'に沿ってPからP'に至るとすると、dr=idxだから
平均値の定理を使うと
となり、
同様に、
となり、
A=∇φ
となり、φはAのポテンシャルである。
ここで、
ということで、
単連結な領域Dで
- ベクトル場Aがポテンシャルφをもつ。すなわち、A=∇φ
- ベクトル場Aが非回転的である。すなわち、恒等的に∇×A=0
- 任意の閉曲線Cに対してである
ことは同値、同じことだということになる。
さらに、定理を。
定理単連結領域において連続な偏導関数をもつ非回転なベクトル場はポテンシャルをもち、そのスカラーポテンシャルは定数を除いて一意的に定まる。
【証明】
前半については既に証明しているので、一意性を証明する。
A=∇φ₁=∇φ₂とすると、∇(φ₁−φ₂)=0。よって、φ₁−φ₂=定数となる。
(証明終)
問題 A=(2x+yz,zx,xy)とするとき、次の問いに答えよ。
(1)Aが非回転であることを示せ。
(2)Aのポテンシャルを求めよ。
(3)Cを(1,0,−1)から(2,−1,3)に至る曲線とするとき、次の値を求めよ。
【解】
(1)
(2)∇×A=0なので、Aはポテンシャルをもつ。
で、
このことから、fはzだけの関数であることがわかり、これをあらためてg(z)とする。
ということで、
となる。
(3)Aはポテンシャルを持つので、
(1,0,−1)を(2,−1,3)を結ぶ線分は、だから、(x,y,z)=(t+1,−t,4t−1)(0≦t≦1)として、線積分をしても良い。計算結果は一致するはずだにゃ。
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