第11回 関数の極大と極小
点aを除くaの近傍の全てのxにおいてf(x)<f(a)であるとき、f(x)はx=aで極大であるといい、f(a)を極大値という。点aを除くaの近傍の全てのxにおいてf(x)>f(a)であるとき、f(x)はx=aで極小であるといい、f(a)を極小値という。極大値、極小値を合せて極値という。
定理25 関数f(x)が点aで微分可能で、かつ、この点で極値をとれば、f'(a)=0である。
[証明]
f(x)が点aで極大であるとする。
f(x)が点aで極大だからf(x)<f(a)。
x<aのとき、
x>aのとき、
よって、f'(a)=0である。
f(a)が極小値のときも同様。
(証明終)
f(x)が開区間Iで微分可能、点a∈Iでf(x)が極値をとるとき、f'(a)=0である。
f(x)=x³(x∈R)とすると、f'(x)=3x²でf'(0)=0であるが、f(x)はx=0で極値を取らない。つまり、上の定理の逆、「f'(a)=0ならばx=aでf(x)は極値をとる」は、一般に成立しない。
定理26 関数f(x)は点aの近傍で連続、aを除く点aの近傍で微分可能とする。x=aの前後で、f'(x)>0からf'(x)<0に変化するときf(x)はx=aで極大、f'(x)<0からf'(x)>0に変化するときx=aで極小である。
[証明]
x<aでf'(x)>0ならばf(x)は単調に増加し、x>aでf'(x)<0ならば単調に減少するから、x=aのとき極大でなる。
x<aでf'(x)<0ならばf(x)は単調に減少し、x>af'(x)>0ならば単調に増加するから、x=aのとき極小である。
(証明終)
f(x)=|x|はx=0で極小であるが、x=0で微分可能でないので、f'(0)は存在しない。しかし、
でx=0の前後でf'(x)の符号が−から+に変じており、上の定理が成り立っていることがわかるだろう。
定理27 f(x)が点aの近傍で微分可能で、かつ、f''(a)が存在するとき、
[証明]
だから、f'(x)はx=aで連続であり、xがaに十分近いとき、f''(a)とは同符号である。
したがって、
f''(a)>0、x<aのとき
f''(a)>0、x>aのとき
よって、x=aの前後でf'(a)の符号が負から正に変わっていて、f(a)は極小値である。
f''(a)<0のときも同様。
(証明終)
問 y=x³–3xの極値を求めよ。
[解]
y'=3x²–3
、y''=6x。
y'=0の解を求めると、
以上のことより、増減表は次の通り。
x
|
・・・
|
−1
|
・・・
|
0
|
…
|
1
|
・・・
|
y'
|
+
|
0
|
−
|
0
|
+
|
||
y
|
増加
|
極大(2)
|
減少
|
減少(0)
|
減少
|
極小(−2)
|
増加
|
y''
|
−
|
0
|
+
|
||||
凸凹
|
上に凸
|
変曲点
|
下に凸
|
よって、x=−1の時に極大で極大値は2、x=1のとき極小で極小値は−2。
f(x)が点aを含むある開区間Iで2回微分可能でf''(x)が連続、つまり、級であるとき、
テーラーの定理(n=2)
となるcがaとxの間にすくなくとも1つある。
これを用いると、f(x)が級であるとき、定理27は次のように証明できる。
xをx∈Iかつx≠aである任意の点とする。
テーラーの定理とf'(a)=0より
となるcがaとxの間にある。
f''(x)はIで連続だから、点xと点aが十分近いとき、f''(c)とf''(a)は同符号。
したがって、f''(c)>0のとき、x≠aだから
よって、f(a)は極小値である。
同様に、f''(c)<0のときf(x)<f(a)となり、f(a)は極大値である。
先に例としてあげたf(x)=x³の場合、f'(x)=2x²、f''(x)=6xだから、f'(0)=0、f''(0)=0となり、2次導関数の符号をを用いた極値の判定は出来ない。
f(x)=x³の時のx=0のようにf'(a)=0、f''(a)=0である場合は、f(a)をx=aで3次でテーラー展開して判定すればよい。
となることから、
になる。
3次導関数f'''(x)が点aで連続でxとaが十分に近いとき、f'''(c)とf'''(a)は同符号。よって、f'''(a)>0のとき、x<aならばf(x)<f(a)、x>aならばf(x)>f(a)。したがって、f(x)はx=aで極値を取らない。f'''(a)<0のときも同様に、f(x)はx=aで極値を取らない。
このように2次より高次の導関数をもちいて極値の判定を行うことが可能である。
f(x)=x³のとき、f'(x)=3x²、f''(x)=6x、f'''(x)=6だから、f'(0)=0、f''(0)=0、f'''(0)>0となることより、f(x)はx=0で極値を取らないと判定することができる。
f(x)=x⁴の場合、f'(x)=4x³、f''(x)=12x²、f'''(x)=24xで、
となり、f(0)の3次導関数の符号を用いた極値の判定は出来ない。
そこで、f(x)=x⁴のような場合は、x=a点まわりで
とテーラー展開し、
を代入すると、
となることを利用し、f(a)の極値判定を行えばよい。
xが点aで十分に近く、f(x)の4次導関数が点aで連続であれば、とは同符号なので、
ならば、x≠aのときf(x)>f(a)だからf(a)は極小値、ならば、x≠aのときf(x)<f(a)だからf(a)は極大値である、と判定することができる。
定理28
関数f(x)は点aの近傍で級で、
であるとする。
nが偶数のとき、ならばf(x)はx=aで極小、ならばx=aで極大であり、
nが奇数のとき、f(x)はx=aで極値を取らない。
[証明]
x(x≠a)を点aの近傍の点とすると、テーラーの定理より
となるcがaとxの間に存在する。
だから、
f(x)は級だからとは同符号。
したがって、nが偶数のとき、ならばf(x)>f(a)となりf(a)は極小値、ならばf(x)<f(a)となりf(a)は極大値である。
nが奇数のとき、点aの前後での符号が負から正へと変化し、のいずれの場合においても、点aの前後でf(x)とf(a)の大小が変わるので、f(x)はx=aで極値を取らない。
(証明終)