2017年6月13日火曜日

第20回 数列の極限とその定理

第20回 数列の極限とその定理


数列
自然数全体の集合をNで表す。すなわち、N={1, 2, 3, ・・・, n, ・・・}
自然数Nから実数Rへの写像実数列、または、数列といい、記号あるいは単にで表す。これは実数をと並べたものである。


数列の収束
数列が次の条件を満たすときα∈Rが存在するとき、α収束するという。
任意のε>0に対して、あるmが存在して、
である。
このとき、αを数列極限値といい、あるいはと表す。
が収束しないとき、発散するという。
特に、任意のMに対して、あるmが存在し、
であるとき、は∞に発散するといい、あるいはで表す。
また、であるとき、は−∞に発散するといい、あるいはで表す。



定理1 (数列の極限の一意性)
収束するの極限値は1つである。
【証明】
だから、任意のε>0に対して、ある正の整数m₁があって
また、
とすると、ある正の整数m₂があって
よって、m=max{m₁,m₂}とすると、任意のε>0に対して
となり、|α–β=0となり、α=β
よって、の極限値は1つである。
(証明終)


数列のすべての項に対して、ある実数Mが存在して、
であるとき、有界であるという。


定理2 (収束数列の有界性)
収束する数列は有界である。
【証明】
とする。
ある1つの値にε>0をとると、ある正の整数mがあって、n>mならば
である。
そこで、
の最大値をMとすると、
よって、収束する数列は有界である。
(証明終)


定理3 (数列の極限の大小)
数列は収束し、
であるならば、
である。
【証明】
とし、α>βと仮定する。
任意のとおくと、より、ある正の整数m₁があって
より、ある正の整数m₂があって
よって、m=max{m₁,m₂}にとると、n>mならば
となり、に矛盾。
ゆえに、α≦βである。
(証明終)


定理4 (数列の極限の公式)
λμを実数の定数とする。このとき、次が成り立つ。


定理5 (ハサミ打ちの定理)
すべての正の整数nについてで、かつ、ならば、
である。
【証明】
より、任意のε>0に対して、ある正の整数m₁があって、n>m₁ならば
より、任意のε>0に対して、ある正の整数m₂があって、n>m₂ならば
また、だから、m=mas{m₁,m₂}にとると、
よって、である。
(証明終了)

であるとき、は単調増加するという。
であるとき、は単調減少するという。


定理6 (有界な単調数列の収束性)
が単調増加数列かつ上に有界(単調減少数列かつ下に有界)ならばは収束する。
【証明】
上に有界な単調増加数列の場合について証明する。
は上に有界だから、上限αをもつ(実数の連続性)。
したがって、
で、かつ、任意のε>0に対して
であるmが存在する。
したがって、n>mならば
よって、
上に有界な単調増加数列は収束し、極限値はαである。
下に有界な単調減少数列の場合も同様。
(証明終)


定理7
とする。ならば、は収束し、である。
【証明】
条件より、は上に有界な単調増加数列、は下に有界な単調減少数列。よって、定理6より、は収束する。
とおくと、定理3よりα≦β
よって
したがって、
で、より、β–α =0となり、α=βである。
【証明終了】


定理8 (区間縮小法)
閉区間の列において
ならば、すべての閉区間に含まれる1点αが存在し、
である。

定理8は定理7より明らかだろう。


部分列
φを自然数NからNへの狭義単調増加関数(n₁<n₂ならばφ(n₁)<φ(n₂))とする。数列が与えられたとき、数列部分列という。
を、とおき、で表す。

定理9
収束する数列の部分列は同じ極限値に収束する。
【証明】
だから、任意のε>0に対して、ある自然数mが存在して、
である。
だから、
(証明終)


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