第0回 実数の連続性
Aを実数全体の集合Rの空でない部分集合とする。
ある実数uが存在し、任意のx∈Aに対して、
が成立するとき、Aは上に有界であるといい、uをAの上界(じょうかい)という。また、Aの上界の最小値を上限といい、記号
や
などであらわす。
uがAの上限であるとは、
(ⅰ) 任意のx∈Aに対して、x≦uである (uがAの上界)
(ⅱ) u'<uならば、u'<xであるAの元xが存在する (uより小さいAの上界は存在しない)
ことである。
この条件(ⅰ)、(ⅱ)は次のようにしてもよい。
α=sup
Aであるとは、次の条件を満たすことである。
(ⅰ) 任意のx∈Aに対してx≦α
(ⅱ’) 任意の正数εに対して、
であるAの元xが存在する。
ある実数lが存在し、任意のx∈Aに対して、
であるとき、Aは下に有界といい、lをAの下界(かかい)という。また、Aの下界の最大値を下限といい、記号
や
などであらわす。
lがAの下限であるとは、
(ⅲ) 任意のx∈Aに対して、l≦xである (lがAの下界)
(ⅳ) l<l'ならば、x<l'であるAの元xが存在する (lより大きいAの下界は存在しない)
ことである。
この条件(ⅰ)、(2)は次のようにしてもよい。
β=inf
Aであるとは、次の条件を満たすことである。
(ⅲ) 任意のx∈Aに対してl≦xである
(ⅳ’) 任意の正数εに対して、
を満たすAの元xが存在する
集合Aが上に有界かつ下に有界であるとき、Aは有界であるという。
実数の連続性の公理
上に有界な実数全体の集合Rの部分集合は上限をもつ。また、下に有界な実数全体の部分集合は下限をもつ。
例 開区間(0,1)の上限は1、下限は0。閉集合[0,1]の上限は1、下限は0である。
問 開区間(0,1)の上限が1、下限が0であることを示せ。
定理0 (アルキメデスの公理)
任意の自然数nに対して、
である。
また、自然数全体の集合Nは上に有界でない。
【証明】
もし、任意の自然数nに対して
が成り立つならば、
となり、自然数全体の集合Nは上に有界になる。
したがって、自然数全体の集合Nが上に有界でないことを示せばよい。
もし、Nが上に有界ならば、実数の連続性の公理より上限αをもつ。
したがって、
任意の自然数nに対してn≦α。
αは上限なので、ε=1とすると、(1)より、α−1<nであるn∈Nが存在することになるが、これからα<n+1∈Nとなり、αがNの上限であることに反する。
よって、自然数全体の集合Nは上に有界でない。
(証明終)
上の定理0ではなく、下の定理0’をアルキメデスの公理と呼ぶ場合もある。
定理0’ (アルキメデスの公理)
任意の正の実数a、bに対して、
である自然数nが存在する。
【証明】
もし、任意の自然数に対して
であるとすると、
任意の自然数nに対して
となり、b/aは自然数全体の集合Nの上界である。Nは上に有界なので、実数の連続性の公理より、上限αをもつ。
したがって、
任意の自然数n∈Nに対して
である。
αは上限なので、ε=1とすると、(1)より、α−1<nであるn∈Nが存在することになるが、これからα<n+1∈Nとなり、αがNの上限であることに反する。
よって、自然数全体の集合Nは上に有界でない。
(証明終)
無限大記号
実数全体の集合Rの部分集合Aが上に有界でないとき、
と表す。
集合Aが上に有界であるとは「ある実数Kがあり、任意のx∈Aに対してx≦u」ということ、すなわち、
なので、集合Aが上に有界でないとは、(3)を否定した
となる。すなわち、
「任意の実数Kに対して、
を満たすxがAに存在する」
ことである。
また、Aが下に有界でないとき、
で表す。
また、Aが下に有界とは
ということなので、
すなわち、
「任意の実数Kに対して、
を満たすxがAに存在する」
ことである。
+∞、−∞ともに実数ではないけれど、x∈Rに対して
と大小関係を定義することにする。
また、
さらに、
と加法を定義することにする。
x>0のとき、
x<0のとき
x=0のとき、
さらに、
と乗法を定義することにする。
除法に関しては、xが実数のとき、
問 という引き算、また、といった割り算を定義しないのか、その理由について考えよ。
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