2019年10月3日木曜日

第2回 ε−δ論法

第2回 ε−δ論法


xが点a限りなく近づくと、その近づき方によらず、関数f(x)l限りなく近づくとき、lを点aにおけるf(x)極限値といい、記号
などであらわす。また、このとき、f(x)は点al収束するという。

高校数学流の関数の極限の定義は上述のようなものであろうが、この定義は感覚的すぎて、正確な議論を進めることができないので、次のように関数の極限を定義することにする。

関数の極限の定義(ε−δ論法)
任意の正数εに対して、ある正数δが存在し、
であるとき、f(x)は点aで収束するといい、記号
であらわす。
また、このとき、lを点aにおけるf(x)の極限値という。

論理記号を使って表すと、
より厳密に表すと

関数f(x)が点alに収束しないは、(1)を否定すればよく、したがって、
がその定義になる。

なお、全称記号∀は英単語「any(任意の)」、あるいは、「all(すべての)」、存在記号∃は英単語「exist(存在する)」を記号化したもので、∀ε>0は「任意のε>0に対して」、「すべてのε>0に対して」、∃εは「あるε>0が存在して」などと読めばよい。
蛇足ながら、記号⇒は「ならば」、∧は「かつ」の意味である。

したがって、(2)は、
「ある実数ε>0が存在して、任意の実数δ>0に対して、ある実数xが存在して、
である」
または
「ある実数ε>0が存在して、任意の実数δ>0に対して、
を満たす、ある実数xが存在する」
などと読めばよい。


問題1 次のことを示せ。
【解】
任意の正数εに対して、δ=ε>0とすれば、
よって、
(解答終)


問題2 cを定数とするとき、次のことを(ε−δ論法を用いて)証明せよ。
【解】
c=0のとき、
は明らか。
そこで、c≠0とする。
任意の正数εに対して、ならば、
となるので、
に定めれば、
ならば、
となり、
(解答終)

問題3 a>0とする。このとき、次のことを示せ。
【解】
とすると、
よって、任意の正数εに対して
とすれば、
よって、
(解答終)

問題4 次のことを示せ。
【解】
任意の正数εに対して、δ=εと定めると、
ならば
よって、
(解答終)


問題5 次のことを(ε−δ論法を用いて)証明せよ。
【解】
とすると、
となるので、
となるように正数δを定めればよい。
0<δ≦1のとき、δ²≦δだから、
となるようにδを定めればよい。
したがって、δ>1の場合を含めて、
任意の正数εに対して、δ
に定めれば、
となり、
ここで、記号min{a,b}は、abのうちの大きくない数、すなわち、
である。
(解答終)

δεに対して一意に定まるものではないので、次のような解答を作ることも可能。

【別解】
とすると、
したがって、任意の正数εに対して、
となるようにδを定めればよい。
2次方程式
となるが、δ>0なので、
よって、
任意の正数εに対して、 とすれば、
となり、
(解答終)

なお、
一般に、δaεの値によって定まるのでと表すことがあるが、問題5のように、aεの値によって一意に定まるものではないので、関数の意味でないことに注意。

問題6 次のことをε−δ論法で表わせ。
【答】
 



問題7 次のことを示せ。
【解答】
とすると、
したがって、任意の正数εに対して、
となるようにδを定めればよい。
δ≦1ならば、
したがって、
に定めれば、
(解答終)


発展問題 a≠0とする。このとき、ε−δ論法を用いて、次のことを示せ。
【解答例】
任意のε>0に対して、
とおく。
任意のε'>0に対して、δ=ε'とすると、
ゆえに、
よって、δ=ε’ならば、x≠0であり、
したがって、
(証明終)


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