2017年9月1日金曜日

第8回 線形微分方程式とロンスキアン

第8回 線形微分方程式とロンスキアン


未知関数y(x)n階線形常微分方程式の一般形は
である。
Q(x)=0のとき同次Q(x)≠0のとき非同次という。
左辺のL[y]は関数から関数への写像なので、実数から関数への写像へと区別するために、[]を用いる。また、y(x)に対する微分演算を含むので微分演算子または微分作用素といい、線形演算子である。

定義
次の2つの性質を満たす演算子を線形演算子という。

(1)式の1つの解をy₀とすると、u=y–y₀
であるから、uは同次微分方程式
の解である。
これを(1)の補助微分方程式といい、その一般解を余関数という。
また、このことから、(1)の一般解は、(1)の1つの解と余関数の和で表されることになる。

定義
n–1回微分可能なn個の関数
に対して、次の行列式をロンスキー(Wronski)の行列式、または、ロンスキアン(Wronskianといい、
であらわす。

とすると、

問1 次の関数のロンスキアンを求めよ。
【解】
(解答終)


定理1 を、u₀を含む区間における微分方程式の解(2)とするとき、それらのロンスキアンは次式で与えられる。

一般の場合の証明は難しいので、線形代数(行列式の計算法)の知識を必要しないn=2の場合について証明することにする。

【証明】(n=2の場合)
u₁u₂を2階線形常微分方程式
の解とする。
ロンスキアンW
xで微分すると、
になる。
u₁u₂を2階線形常微分方程式(3)の解だから
これを①に代入すると、
よって、②の一般解は
したがって、
(解答終)

ロンスキアンWxの関数になるので、これをW(x)と書くことにすると、この定理1から、区間I内の1点x₀におけるロンスキアンW(x₀)≠0ならば、Iで常にW(x)≠0であることになる。

定義
区間で、n個の関数について、全部が0でない定数によって
になるとき、1次従属であるといい、そうでないとき1次独立であるという。

定理2 n–1回微分可能な関数に対して、
ならば、このn個の関数は1次独立である。
n個の関数が1次従属ならばW=0である。

n=2の場合について証明する。

【証明】
対偶法を用いて証明する。
u₁u₂は1次従属とすると、同時に0でないc₁c₂によって
となる。
両辺をxで微分すると、
すくなくともc₁c₂の一方は0でないので、c₁≠0とする。
より、
よって、証明された。
(証明終)


定理3’ n階同次線形常微分方程式(2)のn個の解に対して、xの区間で
ならば、このn個の解は1次従属である。
したがって、n個の解が1次独立のとき、そのロンスキアンは0でない。

定義 n階同次線形常微分方程式(2)のn個の1次独立の解の1組を、その基本解または基本系という。

例 は、2階同次線形常微分方程式
の基本解である。
は、2階同次線形常微分方程式
の基本解である。


定理4 n階同次線形微分方程式の一般解u(x)は、基本解の任意の1次従属で表される。すなわち、
である。


定理4により、(3)の一般解y
であり、(4)の一般解は
であることが保証される。

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