第10回 定数係数の非同次線形方程式
定数係数の線形方程式で、右辺が0でない場合、
を非同次という。これは右辺が0の場合の一般解を求め、1つの特殊解が求められると完全に解くことができる。このため、xによる微分演算子Dを導入し、Dの形式的計算により、を求める方法を考える。
を用いると、(1)は
となる。φ(D)はDの形式的多項式であるが、定数と交換可能、すなわち、
であるから、たとえば、
などと計算することができる。
そこで、割り算を次のように定義し、分数式の計算も可能なようにする。
定義
φ(D)をDの整式とするとき
をφ(D)g(x)=f(x)を満たす関数g(x)と定義する。ただし、φ(D)g₀(x)=0となる関数g₀(x)の違いは無視することにする。
このように定義すると、たとえば、
ただし、
すなわち、f₀(x)=定数の違いは無視する。
定理
φ(D)とψ(D)をDの整式とするとき、
が成り立つ。
【証明】
とすると、
よって、
(証明終)
したがって、Dの分数式も整式の同様に計算できる。
計算公式
aを定数とするとき
問題1 次のことを証明せよ。
と
【証明】
とおくと、
これはg(x)についての1回線形微分方程式だから
であるが、は
の一般解なのでこれを省くと、
である。
(証明終)
同様にして、(数学的帰納法より)
が成立する。
問1 次の問に答えよ。
(1) a、b(a≠b)が定数のとき、次のことを示せ。
(2) (1)の結果を利用し、次の微分方程式の特殊解を求め、一般解を求めよ。
【解】
(1)
(2) 同次微分方程式
の一般解は。
(1)より、
は非同次方程式
の特殊解だから、一般解は
(解答終)
公式
ρ(D)をDの有理式、がxのn次の整式とするとき、
である。
ただし、ρ(0)の値が有限で、マクローリン展開が
とする。
問題2 ρ(r)をrの有理式でr=0で分母は0でないとし、P(x)は3次の整式とするとき、
であることを示せ。
ただし、r=0の近傍で、
とする。
【証明】
ρ(0)は有限でr=0で
と展開可能。
したがって、
(証明終)
問2
(1)
であることを利用して、
であることを導け。
(2) (1)の結果を用いて、
を求めよ。
(3) 次の線形同次微分方程式を解け。
【解】
(1)
x²=tとおくと
(2)
(3) 線形同次方程式
の一般解は
(2)より、x²+x–1は、非同次方程式
の特殊解なので、一般解は
(解答終)
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