第2回 数列の極限
高校数学などは、数列の極限は次のように定義される。
数列において、番号n
を限りなく大きくするとき、がある定数a
に限りなく近づくのであれば、これを
や
という記号で表わし、この場合、数列はa
に収束するという。また、a
を数列の極限値という。
しかし、「限りなく大きくする」や「限りなく近づく」という表現は、あまりに曖昧すぎる。
だから、次の定義を採用することにする。
数列に対し次の条件を満たすa
∈ R が存在するとき、数列は収束するという。
任意のε
> 0 に対してある自然数mが存在して、n
≧ m を満たす任意のn
∈ N に対してである。
このときa
を数列の極限値という。
また、を収束数列という。収束数列でない数列を発散数列という。
論理記号で書くと
や
とかく。
たとえば
という数列があった場合、
になる。
ε
= 0.1だったら、
になるので、
n
≧ m = 11 にすればいい。ε
= 0.01 ならば、n
≧ m = 101 といった具合にすればいい。m
を11
や 101
にしているけれど、これは別に12
でも 123
でも構わない。
εを与えると、それによってmの値が決まり、n ≧ m のすべてのn に対して
εを与えると、それによってmの値が決まり、n ≧ m のすべてのn に対して
が成立するというのがミソ。
このことを明示するために、
と書くこともある。
しかし、
という一般項で表される数列に対して、
ε
= 2 として、すべての自然数n
に対して
なるので、この数列の極限値は1としてはいけない。
εはε
> 0 の任意の実数だから、0.1や0.01といった値でも成立しないといけない。
ちなみに、この数列に極限値は存在しないケロ。
となるので。
定理1 (極限値の一意性)
数列の極限は、存在すれば、ただ一つである。
【証明】
a
と異なるb (b
> a)という極限値が存在すると仮定する。
すると、極限の定義より
になるにゃ。
だから、n
≧ m ならば
εは任意の正の実数なので、ε
= (b–a)/2 とすると、
②より
そして、③より
となり、
となってしまう
これは矛盾である。
a
> bの時も同様。
よって、極限値はただ1つである。
なお、細かいところまで気になる人は、
①を
として、
とすればよい。
ここで、記号max{x,y}は、xとyで小さくない方の値を表わす。
この説明は、次回、
の証明の時に詳しく説明する。
問題 次のことを証明せよ。
【略解】
になる。
で、三角不等式より
になるので、
である。
(解答終わり)
宿題 次のことを証明せよ。
かつ
ならば、a
≧ 0 である。
【ヒント】
a
< 0 と仮定し、ε
= –a/2 とすると、