2016年9月29日木曜日

第2回 数列の極限


高校数学などは、数列の極限は次のように定義される。

数列において、番号n を限りなく大きくするとき、がある定数a に限りなく近づくのであれば、これを
という記号で表わし、この場合、数列a 収束するという。また、a を数列極限値という。

しかし、「限りなく大きくする」や「限りなく近づく」という表現は、あまりに曖昧すぎる。
だから、次の定義を採用することにする。

数列に対し次の条件を満たすa ∈ R が存在するとき、数列は収束するという。
任意のε > 0 に対してある自然数mが存在して、n ≧ m を満たす任意のn ∈ N に対してである。
このときa を数列の極限値という。
また、収束数列という。収束数列でない数列を発散数列という。

論理記号で書くと
とかく。

たとえば
という数列があった場合、
になる。
ε = 0.1だったら、
になるので、
n ≧ m = 11 にすればいい。ε = 0.01 ならば、n ≧ m = 101 といった具合にすればいい。m 11 101 にしているけれど、これは別に12 でも 123 でも構わない。
ε
を与えると、それによってmの値が決まり、n ≧ m のすべてのn に対して
が成立するというのがミソ。
このことを明示するために、
と書くこともある。

しかし、
という一般項で表される数列に対して、
ε = 2 として、すべての自然数n に対して
なるので、この数列の極限値は1としてはいけない。
εε > 0 任意の実数だから、0.10.01といった値でも成立しないといけない。
ちなみに、この数列に極限値は存在しないケロ。
となるので。


定理1 (極限値の一意性)
数列の極限は、存在すれば、ただ一つである。

【証明】
a と異なるb (b > a)という極限値が存在すると仮定する。
すると、極限の定義より
になるにゃ。
だから、n ≧ m ならば
εは任意の正の実数なので、ε = (b–a)/2 とすると、
②より
そして、③より
となり、
となってしまう
これは矛盾である。
a > bの時も同様。
よって、極限値はただ1つである。

なお、細かいところまで気になる人は、
①を
として、
とすればよい。
ここで、記号max{x,y}は、xyで小さくない方の値を表わす。

この説明は、次回、
の証明の時に詳しく説明する。


問題 次のことを証明せよ。
【略解】
になる。
で、三角不等式より
になるので、
である。
(解答終わり)


宿題 次のことを証明せよ。
かつ
ならば、a ≧ 0 である。
【ヒント】
a < 0 と仮定し、ε = –a/2 とすると、


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