2016年9月11日日曜日

第6回 距離の公理


距離とは何か?
その数学の答えの一つが距離の公理。

距離の公理
集合X上で定義された実数値関数
   
が、任意のx,y,z∈Xに対して次の条件を満たしているとき、写像dXの上の距離関数という。
  
この(1)〜(4)を距離の公理という。

(1)は(2)、(3)、(4)から導けるので、いらないといえばいらないのだけれど、この4つを距離の公理という。
  
となり、(2)、(3)、(4)から(1)を導くことができる。

だから、(2)〜(4)を距離の公理とする場合もある。
(2)は同一律、(3)は対称律、(4)は三角不等式を表している。

ちなみに、このxyzは実数である必要はない。
もっと一般的なもので、n次元の空間の点としてもいいし、イヌやネコ、ウサギでもいい。

「おい、⑨ネコ。イヌ、ネコ、ウサギで距離が定義できるのか?」
「出来る!!」
集合X={dog,cat,rabbit}とすると、この直積X×X
X×X={<dogdog>,<dog,cat>,<dog,rabbit>,<cat,dog>,<cat,cat>,<cat,rabbit>,
<rabbit,dog>,<rabbit,cat>,<rabbit,rabbit>}
になる。
<x,y>∈X×Xに対して
  
とすれば、これは距離の公理を満足している。
ちなみに、xyは、それぞれ、イヌ、ネコ、ウサギ。

こういう距離を離散距離という。

少し前に二次元平面の二点間の距離というものをやった。平面上の点をP(x₁,y₁)、Q(x₂,y₂)とするとき、この距離は、
  
である。
しかし、これはユークリッド距離というもので、あくまで数学の数ある距離の一つにすぎず、2次元平面乗の2点間の距離を、たとえば
  
で定義してもいい。
そして、これも距離の公理を満たしている。

ちなみに、<x,y>というのは順序対といわれるもの。
<a,b>=<c,d>が成立するのは、「a=cかつb=d」のとき。
だから、一般に、<x,y>≠<y,x>
本によっては(x,y)と書いていたりもしているけれど、これだとxy平面上の点の座標と混同し、混乱する場合がある。

この他にも、例えば、有界閉区間[a,b]で連続な関数fgに対して、
  
関数fgの距離と定義することができる。
これが距離の公理を満たすことは、
  
また
  
さらに、
  
となるので、
  
となって、
距離の公理を満たしていることがわかる。

一様収束のところで出てきた有界閉区間で連続な関数のノルム
  
も距離になっている。


0 件のコメント:

コメントを投稿