第11回 行列の固有値と固有ベクトル
Aを(2次の)正方行列とする。
を満たすkを行列Aの固有値、をkに対する固有ベクトルという。
はと変形できるから、が存在するための必要十分な条件は
である(註1)。
とすると、
だから、
これを行列Aの固有方程式という(註2)。
(註1)
行列式|A−kE|≠0のとき、A−kEは逆行列を持つ。
となり、に反する。
(註2)
ケイリー・ハミルトンの公式
と、(2)は同じ形をしている事に注意。
問 次の行列の固有値と、固有値に対する固有ベクトルを求めよ。
【解】
とし、kをAの固有値、kに対する固有ベクトルをとする。
(1)
(x,y)が(0,0)以外の解を持つためには、
①は
k=1のとき、
②、③式より0x=0、y=0。
したがって、固有ベクトルは
k=2のとき、
②、③式より、−x=0、0y=0。
したがって、固有ベクトルは
(2)
(x,y)が(0,0)以外の解を持つためには、
k=2のとき、
k=7のとき
したがって、固有ベクトルは
(3)
①が(x,y)=(0,0)以外の解を持つためには
k=1のとき、①は
したがって、固有ベクトルは
(解答終)
定理
(2次の)正方行列Aの固有値が相異なる実数のとき、それに対する固有ベクトルは1次独立である。
【証明】
Aの相異なる2実根をλ₁、λ₂とし、λ₁、λ₂に対する固有ベクトルをそれぞれとすると、
そこで、の一次結合を
とすると、
を消去するために、①×λ₂−②を計算すると、
だから、
a=0だから、①は
だからb=0。
したがって、とは1次独立である。
(証明終)
上の定理より、問の(1)、(2)で求めた固有ベクトルは互いに1次独立であることがわかる。
h=1、l=1とすると、(1)の固有ベクトルはが1次独立であることは明らか。
また(2)の固有ベクトルは、の1次結合を作り、それをと置くと、
になる。
とおくと、|A|=1・1−2・(−1)=3≠0だから、Aは逆行列を持ち、
となり、 1次独立である。
今すごく大切なことをさり気なく書いていたけれど、列ベクトルが1次独立か否かの判定は、から作った行列
の行列式
の値から、|A|≠0ならば1次独立、|A|=0ならば1次従属と判定できる!!
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