第2回 差集合
§1 集合の差
A、Bを集合とする。
x∈Aであるがx∈Bでないではないx全体からなる集合、すなわち、
をAとBとの差集合または差といい、記号
または
などであらわす。
差集合の定義から明らかであるが、
【略証】
x∈A−Bとすると、x∈Aかつx∉Bなので、x∈Aである。
故に、
(略証終)
例1 Aを自然数全体の集合、Bを偶数全体の集合とすれば、A−Bは奇数全体の集合
例2
§2 空集合
A={1,
2, 3}、B={1,
2, 3, 4, 5}とする。
このとき、
であるが、AとAの差集合A−A、AとBの差集合は、要素をなにも持たない集合となる。
このように、要素を何ももたない集合を空集合といい、記号
∅または{}
であらわす。
さらに、いかなる集合Aに対して
と定義する。
また、
と定義する。
Aを任意の集合とするとき、次の式が成立することは明らかであろう。
問1 A⊂Bならば、A−C⊂B−Cであることを示せ。
【解】
A−C=空集合ならば、A−C⊂B−Cは明らか。
そこで、A−C≠∅とする。x∈A−Cだから、x∈Aかつx∉C。
A⊂Bだから、x∈Bかつx∉C。したがって、x∈B−C。
ゆえに、
A⊂Bならば、A−C⊂B−C
(解答終)
問2 A−B=∅であるための必要十分な条件はA⊂Bであることを示せ。
【解】
AやBが∅のときは明らか。
A≠∅、B≠∅とする。
A−B=∅は、x∈Aかつx∉Bなるxがないことで、x∈Aならばx∈Bであることに他ならない。
したがって、
(解答終)
問3 空集合∅は1つであることを示せ。
【解】
∅₁、∅₂は空集合とする。すると、
よって、空集合は1つである。
(解答終)
§3 補集合
BがAの部分集合である場合、AとBとの差を、BのAに関する補集合(Complementary
Set)という。
Aが空集合でない場合、Aの要素は、Bに属するか、A−Bに属するかのいずれか一方だけが成立する。
すなわち、次の関係が成り立つ。
(1) x∈Aならば、x∈Bまたはx∈A−B
(2) x∈Bならばx∉A−B
(3) x∈A−Bならばx∉B
また、
Aに関するAの補集合は空集合∅であり、Aに関する空集合∅の補集合はAである。
定理3 A⊃BならばA−(A−B)=Bである。
【証明】
A−B=Cとする。
まず、A−C⊂Bであることを示す。
A−C=∅であるならば、A−C⊂B。
A−C≠∅のとき、
x∈A−Cとすると、x∈Aかつx∉C、すなわち、x∈Aかつx∉A−B。よって、x∈B。
ゆえに、
A−C=A−(A−B)⊂B
つぎに、B⊂A−Cであることを示す。
B=∅ならばB⊂A−C。
B≠∅のとき、
x∈Bとすると、x∈Aかつx∉A−B、すなわち、x∈Aかつx∉C。ゆえに、x∈A−C。
したがって、
B⊂A−C=A−(A−B)
よって、
A⊃BならばA−(A−B)=B
(証明終)
定理3の逆、
A−(A−B)=BならばA⊃B
が成立するので、
A−(A−B)=BはA⊃Bの必要十分な条件である。
対象となる集合が、固定された集合Xの部分集合であるとき、Xを普遍集合(Universal
Set)という。A⊂Xのとき、集合AのXに関する補集合を単に補集合といい、記号
であらわす。
すなわち、
普遍集合Xと空集合∅の補集合は、
となることより、
問題4 定理3の逆
A−(A−B)=BならばA⊃B
を証明せよ。
0 件のコメント:
コメントを投稿