2017年1月13日金曜日

第15回 (仮説)検定

第15回 (仮説)検定


ある事柄が成り立つという仮説を立て、その仮説に基づいて計算した確率がある基準の確率(優位水準または危険域)より小さいとき、その仮説は間違っていると判断し、そうでないときはその仮説は正しいと判断する。
このような判断を検定という。
危険率、または、優位水準は、通常、5%や1%が採用される。


問題1 ある町で3000人のうち1000人が流感にかかった。しかし、毎日冷水まさつをしていた10人の学生のうちで、流感にかかったものは2人だけであった。冷水まさつの効果があるといえるか。危険率5%で判定せよ。
【解】
「冷水まさつの効果はない」という仮説を立てると、10人の学生のうち流感にかかったものが2人以下である確率は
したがって、「冷水まさつの効果はない」という仮説は棄却できない。
つまり、「冷水まさつの効果はない」。
(解答終了)


問題2 Aは、これまで3題のうち2題くらいの割合でしか問題が解けなかったが、今回のテストでは、これまでの同程度の問題に対して、8題のうち7題を解くことができた。このことから、Aの実力が上がったと判断してよいか。
さらに、次回のテストにも、これと同程度以上の好成績を上げたとしたらどうか。
危険率5%で検定せよ。
【解】
Aの実力が上がっていない」と仮定すると、問題を解く確率は2/3だから、8題のうち7題以上解く確率は
だから、「Aの実力が上がっていない」という仮説は棄却できず、「Aの実力が上がった」と判断できない。
2回続けて8題のうち7題以上解ける確率は
したがって、「Aの実力が上がった」と判断できる。
(解答終了)

1回だけだと、Aが8題のうち7題解くことができる確率は約0.2だから十分に起こりうる。
しかし、2回続けて起きるとなると、確率が約0.040.05よりも小さく、このようなことはまず起きない。だから、「Aの実力が上がっていない」という仮説は棄却されるというわけ。


問題3 ある政治上の意見で、有権者10人を任意抽出して意見を求めたところ7人までが賛成であった。これによって有権者の過半数であるといえるか。
また、10人のうち9人まで賛成であったとするとどうか。
優位水準5%で検定せよ。
【解】
「有権者の賛成反対が五分五分」と仮定すると、10人のうち7人以上が賛成する確率は
よって、「有権者の賛成反対が五分五分」という仮説は棄却できない。
したがって、「賛成が有権者の過半数」であるとは言えない。
同様に、10人のうち9人が賛成である確率を求めると、
よって、「有権者の賛成反対が五分五分」という仮説は棄却できる。
したがって、この場合、過半数であるといえる。
(解答終了)

ちなみに、8人の場合
だから、「有権者の賛成反対が五分五分」という仮説は棄却できない。


問題4
(1) さいころを4回振ったら1の目が3回出た。このさいころは1の目が出やすいと判断してよいか。危険率5%で検定せよ。
(2) さいころを180回振ったら1の目が48回出た。このさいころは1の目が出やすいと判断してよいか。危険率1%で検定せよ。
【解】
(1) 「さいころが正しい」と仮定すると、4回投げて1の目が3回以上出る確率は
よって、「さいころの目が正しい」という仮説は棄却される。
つまり、1の目が出やすい。

(2) 「さいころが正しい」と仮定する。Xを1の目が出た回数とすると、Xは二項分布に従うので、平均値m、標準偏差σ
nが大きいから、Xの分布は平均m=30、標準偏差σ=5の正規分布に近似できる。
そこで、
とおくと、Zは標準正規分布N(0,5)に従う。
X=46とおくと
したがって、
よって、「さいころが正しい」という仮説は棄却される。
したがって、「1の目が出やすい」。
(解答終了)

Xが正規分布N(30,5²)に従うとすると、1の目が出る回数は信頼度99%で
出たとしても最大で約43回。
46回は多すぎるというわけ。

問題5 豌豆(えんどう)の交配で、黄色と緑色の豆のできる割合は、メンデルの法則に従えば3:1である。この実験で黄色が428個、緑色が132個得られたという。この結果はメンデルの法則に一致しているといえるか。優位水準5%で検定せよ。
【解】
メンデルの法則に従うという仮説を立てると、黄色のえんどう豆の個数Xは二項分布に従い、平均値mと標準偏差σ
したがって、
したがって、優位水準5%で「メンデルの法則に従う」という仮説は捨てられない。
すなわち、「メンデルの法則に従う」と考えられる。
(解答終了)


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