第19回 応力テンソル
固体が外力を受け変形すると、固体の内部に外力に応じた力が発生する。この(単位面積)あたりの力を応力という。
固体内に一つの断面を考えるとき、圧力とは異なり、応力は断面の垂直方向に働くとは限らないので、断面の単位法線ベクトルnを定め、nの向かっている側から、単位面積当たりに作用する力をもって応力を定義する。
応力をTとすれば、固体内の点Pにおける微小面積ΔSにはTdSの力が作用する。しかし、ΔSの向きが変わると、一般的に、Tの向きも大きさも変わる。
図のように、点Pを原点とする直交座標をとり、nに垂直な3つの面によって囲まれる微小な四面体PABCの力の釣り合いを考える。
△ABCの単位法線ベクトルをnとし、△ABCの面積をS、それに作用する力をTΔSとする。
△PBCの面積をΔS₁とし、その法線ベクトルをe₁としたとき、△PBCに作用する応力をT₁ΔS₁とすれば、e₁は四面体外部から内部に向かっているので、四面体の外部から作用する力は−T₁ΔS₁である。
同様に、△PCA、△PABの面積をそれぞれΔS₂、ΔS₃と、その法線ベクトルをe₂、e₃としたときすれば、外部からこれらの面に作用する力は−TΔS₂、−TΔS₃となる。
△ABCが平行移動して点Pに近づく極限を考えると、TはPにおいてnに垂直な面に作用する応力とみなせる。同様に、T₁、T₂、T₃は、それぞれn₁、n₂、n₃に垂直な面に作用しているとみなすことができる。
よって、力の釣り合いは、
ΔS₁、ΔS₂、ΔS₃は、ΔSの各座標平面上の正射影であるから、nの成分をn¹、n²、n³とすると、
したがって、
Tの成分を、の成分をとすると、
すなわち、
nは点Pの任意の方向にとれるので、はテンソルの成分である。これを応力テンソルという。
図のような微小な直方体を考える。その辺の長さをΔx¹、Δx²、Δx³とする。
x¹軸まわりのモーメントを考えると、x³軸に垂直な2面に作用する力はそれぞれ
となり、釣り合っている。よって、x¹まわりのモーメントを考えるとき、面に作用する力だけを考えればよい。したがって、x¹まわりのモーメントの和は
同様に
が成立する。
よって、応力テンソルは対称テンソルである。
応力テンソルは対称テンソルだから、そのテンソル2次曲面を考えることができる。これを応力2次曲面といい、応力2次曲面の主軸を応力の主軸という。3つの主軸のそれぞれに垂直な面を主要面、3つの主軸の応力を主応力という。
nが応力テンソルの主方向に向かっているとき、(1)は
したがって、主軸に垂直な面には、応力は垂直に作用する。
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