第2回 テンソルの演算
§1 テンソルの演算
2つのテンソルTとSが与えられたとする。このとき、任意のベクトルxに対して
とおけば、線形条件
が成立する。
したがって、Wはテンソルであり、このWを2つのテンソルTとSの和といい、記号W=T+Sであらわす。
同様に、任意のベクトルxに対してとおけば、Uはテンソルとなり、このUをテンソルTとSの差といい、記号U=T−Sであらわす。
テンソルTとSの成分をとすれば、
また、
スカラー(実数)aとテンソルTが与えられているとする。任意のベクトルxに対して
とおけば、Vは線形条件を満たすので、Vはテンソルであり、このVをスカラーaとテンソルTの積といい、記号aTであらわす。
テンソルaTの成分は
となる。
テンソルの演算法則
a、bを任意の実数、T、S、Uをテンソルとするとき、次の演算法則が成り立つ。
特に、
ということで、(−1)S=−Sとあらわすことにする。
また、(ⅱ)から
これらはほとんど明らかだろう。
だから、(ⅰ)と(ⅱ)だけ、略証(?)を与えることにする。
§2 対称テンソル、交代テンソル、転置テンソル
テンソルTの成分に関して
が成り立つとき、Tを対称テンソルという。
行列で表せば、対称テンソルは
の形、すなわち、対称行列になる。
テンソルTの成分に関して
が成り立つとき、Tを交代テンソル(反対称テンソル)という。
したがって、テンソルの対角成分T₁₁、T₂₂、T₃₃は
となる。
よって、交代テンソルの成分を行列で表せば、
の形、すなわち、交代行列になる。
交代テンソルの成分は交代行列だから、
とあらわすことができる。
したがって、任意のベクトルに対してとすれば、yの成分は
となり、とおけば
したがって、
となる。
このようにして作られたベクトルは普通のベクトルとは異なる性質を持つので、軸性ベクトルと呼ばれる。
問1 テンソルTが対称、かつ、交代テンソルであるとき、Tは零テンソルであるをことを示せ。
【略解】
テンソルTの成分をとすると、対称テンソルだから
さらに、交代テンソルだから
(略解終)
問2 任意のテンソルは対称テンソルと交代テンソルの和に分解できることを示せ。
【解】
テンソルTの成分をとし、
とおくと、
となり、Sは対称テンソル、Aは交代テンソルである。
よって、任意のテンソルは対称テンソルと交代テンソルに分解できる。
(解答終)
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