2017年2月19日日曜日

第1回 初等幾何の公理

第1回 初等幾何の公理


これからやる初等幾何の内容は、公理に基づく幾何学です。また、直線や円、さらに中点や中線といった中学で習う数学、幾何の用語を知っていることを前提として議論を展開します。


§0 用語の説明

公理と定理
すべての証明の出発点として、いくつかのそれ自身は証明せずに正しいものと認め、他のことがらを推論する基礎となるものを公理という。また、公理をもとにして正しいことが証明されたものを定理という。

定義と無定義用語
用語や記号などの意味を明確に定めた文章を定義という。点や直線などは定義しないで無定義用語として、そのまま用いる。

合同の定義
2つの図形があって、一方を移動したり、裏返したりして、ちょうど他方に重ね合わすことができるとき、この2つの図形は合同であるという。

平行線の定義
同一平面上にある2直線が共有点を持たないとき、この2直線は平行であるという。

§1 平面幾何の公理
平面幾何の公理には、次のようなものがある。

(1) 結合の公理 2点を通る直線はただ1つである
(2) 運動の公理 図形は、その形や大きさを変えないで、移動したり、裏返したりすることができる
(3) 平行線の公理 直言外の1点を通り、この直線に平行な直線はただ1つである

さらに、次の公理を加えたりするにゃ。
(4) 間と分割の公理
① 1直線上の異なる3点、ABCについて、次のいずれかが成り立つ。
 (ア) BCAの間にある
 (イ) BACの間にない
② 1直線上にない異なる3点、ABCと、これらの点を通らない直線lについて、次の関係のうちただ一つが成り立つ。
 (ア) lは三角形ABCの2辺と交わる
 (イ) lは三角形ABCのどの2辺とも交わらない

(4)の間と分割の公理のかわりに、次のパッシュの公理を採用するものもある。

パッシュの公理
平面上の1直線は、この平面を2つの側に分け、同じ側の2点を結ぶ線分上の点はすべて同じ側にあり、異なる側の2点を結ぶ線分はもとの直線と交わる

さらに、次のようなものなどを公理として採用し、出発点とする。

(1) a=a
(2) a=bならばb=a
(3) a=bb=cならば、a=c
(4) a-bc=dならば、a+c=b+da−c=b−d

§2 直線の角度と対頂角
直線の角度は、2直角、180°である、と定義する。


定理1
「対頂角αβは等しい」
【証明】
α+γ=180°
β+γ=180°
よって、
α+γ=β+γ
α=β


§3 平行線と角

定理2
2つの直線に1つの直線が交わってできる1組の錯角が等しいとき、はじめの2直線は平行である。
【証明」
2直線にabに他の直線cが交わってできる錯角をαβとし、abが平行でないと仮定する。
この図形をABの中点Oのまわりに回転し、点Aが点Bの位置に、点Bが点Aの位置にくるようにすると、ABBAが重なる。
仮定より錯角α=βなので、直線a、直線bは重なる。
Pの移った点をP’とすれば、点Pと点P'は相異なる2点となる。
異なる2点を通る直線が2本あることになり、結合の公理に反する。
よって、直線aと直線bは平行である。



定理3
平行な2直線が他の直線と交わってできる錯角は等しい。
【証明】
平行な2直線をabとし、この2直線に交わる直線をcとする。acbcが交わってできる錯角をそれぞれαβとする。
α≠βと仮定する。
Bを通り、cと角αになる直線b'をひく。
定理2より、ab'は平行になり、点Bを通りaに平行な直線が2本存在することになり、不合理。
よって、α=βである。

この定理1、2、3から、次の定理が得られる。


定理4 2つの直線が1つの直線と交わってできる同位角は等しいならば、この直線は平行である。また、平行線に1つの直線が交わるとき、同位角は等しい。

中学校で習った「平行線の錯角(同位角)は等しい、錯角(同位角)が等しければ2直線は平行である」という平行線の性質が証明されたということになる。


§4 三角形と角

この定理3を使うと、三角形の内角の和が2直角、180°であることが次のように証明される。

定理5(三角形の内角定理)
三角形の内角の和は2直角である。
【証明】
頂点Aを通り、BCに平行な直線をひく。
定理3よりβ=β'α=α’
また、α+β'+γ’=2直角=180°
よって、
α+β+γ=2直角=180°
(証明終わり)

さらに、定理4を用いると、次の三角形の外角定理が証明される。

定理6(三角形の外角定理)
【証明】
頂点CをとおりABに平行な直線をひく。
定理3よりα=α’、定理4よりββ’
よって、
α+β=α’+β’
(証明終わり)

問題1
定理6を用いて定理5「三角形の内角の和は2直角である」を証明せよ。


例題1
下図のを求めよ。



【解】
直線lmに平行な直線を次のように引けば、x=α+βになることが分かる。


だから、求める角度x°=45°+30°=75°

問題2 下の図で、lmが平行である。∠xの大きさを求めよ。




【ヒント】 平行線を2本引け!!


問題3 下の図で、BPCPはそれぞれ、∠ABC、∠ACBの二等分線である。∠A=64°のとき、∠BPCは何度か。
【答】 この図を書いたお絵描きソフトによると、122°


問題4 次の定理を証明せよ。
定理 
「平行な2直線の一方と交わる直線は他方にも交わる」

【証明】
平行な2直線をabとし、直線caの交点をAとする。
cbと交わらないと仮定する。
cbは交わらないので、cbは平行。
であるとすると、点Aを通るbに平行な直線が2本引けることになり、平行線の公理に反し、不合理。
よって、
「平行な2直線の一方と交わる直線は他方にも交わる」
(証明終わり)


問題5 次の定理を証明せよ。
定理
「異なる2直線が共有点をもつとき、共有点は1つである。」
【証明】
2直線abが2点ABを共有点をもつと仮定する。
結合の定理より、2点ABを通る直線は1つだけであり、abは同一の直線となって、「異なる2直線」に反し、不合理である。
よって、
「異なる2直線が共有点をもつとき、共有点は1つである。」
(証明終わり)


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